![]() | しっていると便利な豆知識1997年11月号 海の法規と知識 第31回 中山隆一郎 著 |
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航海中、霧に巻き込まれて方角が判らなくなったとか、沖に出過ぎて方角が判らなくなったなどよくある話しだ。そんなとき、おおよその方角なら自然の力を借りて十分に把握できる。少なくとも昭和の初期までは、方角はともかく船の位置は太陽や星の観測により求めていた。天文航法は現在においても航海の基本であり、大型船の海技免状を取得する際には欠かすことのできない航海術である。 (昼間) まず時計を手に持ち、時計の短い針を太陽の方向に向けよう。そして、短い針と文字盤の12の数字のとの2分の1の方角を頭に描いてほしい。この方向が南である。
無数の星がちりばめる夜空、少しずつだが星は動いている。いや厳密にいえば地球が自転しているのだが、その軸の中心に位置する星が一つだけある。それは北極星だ。 北極星は常に北の方角に位置し、この星さえ見つければ方位を把握するのは簡単だ。つまり北極星のある方向が北である。
何ごとも応用であり、例えば砂漠や樹海で迷ったときにもこれを知っていれば助かる確率は飛躍的に高くなる。それは、一つの方角さえ判れば同じ方向に向かって進むことができる。同一方向を延々と進めば必ず出口に着くだろう。少なくとも同じ場所をグルグル回っているようなことはない。 さあ、これであなたは助かる。おめでとう。そして更によいことをお教えしよう。 砂漠や樹海には行かないことだ。
水平線までの距離は?
さて、それでは視界の良否に関らず、何キロ先まで見ることができるのだろうか。
これは次の計算式によって求めることができる。
2.07√h = 水平線までの距離(マイル)
3.83√h = 水平線までの距離(km)
※ h=高さ
このうち高さとは、地上から目の位置までの高さをいい、身長が170cmならば目の位置は地面から150cmくらいだろう。すると、3.83√1.5=3.83×1.2247=4.69kmとなる。
成人男性が地面に立った状態で見える距離は約5kmなのだ。
ところで平方根なんて中々覚えているものではない。確か2は1.41421356(人よ人よに人みごろ)で3は1.7320508(人並みにおごれや)だったと思う。このあたりは中学生のほうがよっぽど詳しいだろう。
というわけで、何のために水平線までの距離が必要なのだろうか。それは、一般に航海では水平線までの距離のことを光達距離と呼んでおり、灯台の光が何マイル先から見ることができるかを把握するための計算なのだ。先の計算のように目の高さ(眼高)によって見える距離が変わる。当然、デッキで見るのと、フライングブリッジで見るのと、ツナタワーで見るのとでは大きく異なる。
計算が大嫌いなお父さんのために計算結果だけ申し上げよう。
尚、目標物に高さがあればこれも計算に加える。つまりこうだ。 距離(km)=3.83√h(自分の眼高)+3.83√h(目標物の高さ) 本紙の読者の皆さんだけは、くれぐれも「富士山が見えるのに○○港の灯台が見えないわけないだろう」などと恥ずかしいことは云わないで欲しい。地球は丸い、園児でも知っている。
どうして船は風の吹いている方向に向くのだろうか?
船は前に進むと重心が船の中央よりも前に移動する。そうなると重心よりも後方のほうが面積が広くなるので風圧を受け風上に向いてしまう。横風を受けると特に顕著だ。
風向計が風上を指すのと理屈は一緒だ。
左から風が吹けば反射的に左に舵を切りたくなってしまうが、それは全くの逆で、左から風が吹いているときには右に舵を切らないと真直ぐ進まない。いわゆる「あて舵」という奴だ。
船の操舵は上手い下手ではなく、知っているか知らないかにより歴然とした差がでる。
荒天時に転覆させないためには
・重心を下げること
・横波を受けないこと
重心を下げることは極めて重要だ。通常シケていると船酔い者が続出する。すると決まってフライングブリッジに集結する。無理もない、フライングブリッジは風を受けるし気持ちがいい、少なくとも船内にいるよりもはるかに快適だ。
しかし、船酔い者には悪いが船長は船酔い者を肉の固まりぐらいに思っていたほうがよい。
思考能力と体力が極めて衰退している状態でフラフラしているのは非常に危険だ。 そして重心を下げるという至上任務があるので船のそれも低いところに船酔い者を連れていき、船酔いが更に酷くなろうとそんな事を気にする必要はない。ガタガタぬかすなら紐で縛っておけばよい。
船酔いした者は、縛られる行為を恨むのではなく荒天時に出港する船長の判断を恨むべきだ。
その他、重いものは全て船底近くに下し、とことん重心を下げることに努めなければならない。重心が下がれば復原力が増し、風波により傾いた船で「お・き・あ・が・ら・な〜い〜」などと泣き言ぬかさずに済むのだ。
そして横波を受けないことも重要だ。船は横波を受けると復原力が著しく低下する極めて危険な状態となる。かといって波を真正面から受けるのもよろしくない。
通常は船首の方向を向いて、右もしくは左20〜30度の方向から波を受けると船に対するダメージが少ないとされている。専門用語でこれを「ちちゅう法」と呼んでいる。
いずれにせよ大切なのは波の飛来周期と速力とのバランスであり、速過ぎても遅過ぎてもダメだ。これは船の固有周期というものがあり、個々の船により異なるので一概に云うことはできない。
その場で臨機応変に掴むしかない。
ただ一つ云えることは横から波を受けないことだ。
最後に、荒れ狂う海を見てチビってしまうような腰抜けは、黙ってシーアンカーを打てばよい(大き過ぎるシーアンカーはより危険となることがある)。ロープが軽く張る程度に機関を前進にしておけば、ロープが切れない限りはまず転覆することはなかろう。そして泣きながら無線で助けを求めるがよい。
船長に必要な勇気は、出港する勇気ではなく、出港を中止することができる勇気だ。そして気象というものを十分に把握することだ。
本紙10月号(No.29)の桜田時央氏の「気象・海象」でブローチングについて詳しく、そして判り易く書かれてあるので是非とも読んで頂きたい。これは非常に大切なことなのだ。
浮くロープ、沈むロープ
(表3)
表の見方だが、比重は1以上ならば水よりも重いので沈むものであり、1以下ならばその逆で水に浮くものである。表の中ではポリエチレンとポリプロピレンが水に浮くものだと判る。
そして強度比とは、マニラ麻に対してどの程度強いかもしくは弱いかを示しており、例えばナイロンなど2.3倍の強さがある。
破断時の伸びとは、ロープが切れる瞬間にどの程度ロープが伸びているかを%で示しており、ナイロンならば40〜50%伸びた状態で切れることが判る。
そこで、またまた計算嫌いなお父さんのために、破断力(動索/安全使用率)を一覧に示そう。破断力とは何トンの負荷で索が切断するかを示す数値であり、それは動索、静索など様々な種別があるが、今回はプレジャーボートで一般に必要な数値である破断力のうち、動索の安全使用率を申し上げる。
舵が壊れたときの保進方法
船の船尾中央から後方に向かってロープを流す。長ければ長い程よいのだが、まあ船の長さと同じくらいの長さがあればいいでしょう。そしてそのロープの先には何らかのオモリをつける。このオモリは水に沈んでしまうものではダメだし、かといって軽いものでもダメだ。灯油などを入れるポリタンクなどがあると丁度よい。このポリタンクに海水を8割り程度満たしておけばよいだろう。
さあ、これで前進してみると何と真直ぐ進むではないか。船が風潮流により左右に振れるのを船尾から流したポリタンク付きのロープが支え、舵の代用を努めているのだ。
さて、ここで問題が発生した。それは変進することができないことだ。そこでより一層の高度なテクニックは、船尾から流すロープを2つ造り、左右の両方から流すことだ。そして右に回りたいときは左側のロープを引き上げるかもしくは短くし、左に回りたいときはその逆だ。保進の精度は舵と比較すればかなり劣るが、万一のときに指をくわえてボケッとしているよりはマシである。
水中を見たいときは
10年程前のことだが、実家が漁師の友人宅へ伺い、そのとき友人の父親が今夜のおかずを捕り行こうと言い、皆で早速ボートに乗った。宮城県ということもあり水が非常に綺麗であり、また海も非常にナギていたが、水の中なんて水面で光が反射して中々見えるものではない。
友人の父親は手カギを縦横に操り、ウニ、アワビを見事なまでに捕っていたが、日が暮れはじめて水面の反射が強くなりだしたとき、ストアーから油の入った瓶を持ってきて割り箸に油を含ませ1滴水面にポトッ、あら不思議、私のようなド素人でも水中が手に取るように見える。
なお、油は家庭で使われているサラダ油で、1滴を海に落としたところで何ら害はない。
ところで東京港でやったらどうだろうか、本当に見えるのだろうか。いやはや水中メガネをつけて潜ったって1m先も見えませんよ。この漁師の手法は釣り人がよく使う偏光グラスの役目を果たすものといえば適当だろう。
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