![]() | 海のことば(Navigation)1998年2月号 海の法規と知識 第35回 中山隆一郎 著 |
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天測とは、天体の位置を測定することにより自身が地球上のどこにいるかを計測する手段であり、古くはコロンブスの時代から今日まで、欠かすことのできない航海術の基本である。
現在においては自身の位置を求めるにはお馴染みのGPS(カーナビと同等品)がすっかり定着してしまったが、このGPSの歴史は未だ浅く、近年まで位置測定はその観測場所ごとに様々な手段の中から適切な方法で測定していた。 天測をするためには大きく分類して3つの技能が要求される。 1つは、夜空を見上げてどれが何という星かを識別判断する技能。次に各天体を六分儀(セクスタント)という測定儀を使って水平線から天体までの角度を正確に求める技能。最後に諸情報から自身の位置を計算により求める技能である。 これら3つの技能のうち、どれか一つでも欠けていれば正確な位置測定はできないのだ。 私の体験では、前述1つ目の「何という星かの判断」が一番難しくかつ容易に判断できるまでに相当の時間を費やしたものであった。
都会の夜空ならば見える星も少なく、それゆえに識別も容易なのだが洋上ともなると周囲の光には影響されず、かつ空気も澄んでいることから満天の夜空の名の如く、無数に散りばめられた星が航海者を悩ませる。無数の星が散りばめられた満天の夜空を美しく思えるのは、天測に無関係な者か極めた者のみだ。これほど無情な教官は他にはない。
位置測定装置
GPSの運用が始まる以前は、NNSSがもっぱら主流であった。
少なくとも私は外航船で航海していた頃にはGPSなど見たことも触ったこともない。今の航海士が実にうらやましく思える。そしてこんな素晴らしい機器がポケットマネーで買えてしまい、クルーザーにも取り付けられるような時代がくることをほんの10年前ですら誰しもが予想だにしなかっただろう。
自動車に取り付けられる「カーナビ」にいたってはもう言葉がでない程の驚きである。
レーダー(RADAR)
レーダーは昭和11年(1936)にドイツの戦艦「シュペー」とイギリスの巡洋艦に始めて搭載されたのは有名な話しだが、いずれも精度の面で問題も多かった。ところが、昭和15年(1940)にはマグネトロンの発明によりその性能が飛躍的に向上した。
レーダーが海戦で使われるようになったのは、昭和16年(1941)にドイツの戦艦「ビスマルク」がイギリスの駆逐艦に対して夜間射撃を行ったのが最初であるといわれており、日本に関係あるものとしてはアメリカが昭和17年(1942)11月11日の夜にサボ島沖を航行中の日本艦隊に対して行った攻撃が始めてだ。日本艦隊はアメリカ艦隊を8海里にて確認し接近していたところ、突然アメリカ艦隊は砲撃を開始し、第1弾目から命中した。これまで日本海軍は夜戦を得意とし多くの戦果をあげてきたがアメリカのレーダーを利用した無照射砲撃によりその後の戦争に大きな影響を与えた。
戦後、このレーダー技術は広く一般船舶にも利用され、航海の安全に大きな貢献をした。
レーダーの目的は自分の船の位置を求めるのに使うのみならず、ブイをはじめとする様々な障害物の発見、他の船舶の動向を把握するなど多用途に用いられる。
私が以前アイルランドのダブリン港に入港するときにタバコをくわえながらARPAを操作していたところ、モニター画面にタバコの灰のほんのひとかけらが落ち、画面タッチ式のARPAは突然誤動作を起こして苦い経験をしたことがある。以来、私は高度な航海計器を好んで使わないようになってしまった。
どんなに技術が進歩しても
また、先述の高性能レーダーやARPAもその一助をなしている。様々な機器を縦横に駆使することにより、安全性は飛躍的に確保されたと思う。
ただし、全てが正常に稼働しているという大前提のもとにだ。
先にも触れたように、タバコの灰のひとかけらが正常な機能を全て奪ってしまうことだってある。 所詮は機械なのだ。
一度もやいを離して陸を離れたら、船長に求められるものはオプション(選択肢)だ。これがダメならあれ、あれがダメならこれと、あらゆる手段を尽くすことができるためのオプションを持つことが大切なのだ。 それを「知識」と云う人もいれば「経験」と云う人もいる。
結果的に人命を守れればよい。
人命を守るためにはどうしたらよいかと常に考えていさえすれば知識や経験は後からついてくるのではないだろうか。
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