![]() | 水ぎわの悪党たち1998年2月号 海の法規と知識 第39回 中山隆一郎 著 |
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今回は、水ぎわにいる悪党たちの行為を解説するので、それを知ることにより自身を同様の災いから未然に逃れる一助にして頂きたい。
くそガキ(いたずら)
事例として多いのが、中学生や高校生(時として大学生も)が船内に忍びこみ中でシンナー遊びをしたりセックスをするなど人目を拒んでするような事が中心的である。当然、後片づけして帰るようなことは無い。それどころか挨拶がわりにスプレーで落書きしたり、カッターでソファーを破ったり、船主が腹をたてることにより快感を受けるような奴らなので被害に遭ったときには相当の覚悟をしておいたほうが良いだろう。
幸いとでもいうか「くそガキ」にとって船内にある装飾品や航海計器などは全く価値のないものであり、それらが盗難されるようなことは極まれなケースだ。どちらかといえばタバコやライターを持って帰る程度である。
これら「くそガキ」に対する防御策は、まず鍵をかけ忘れないことだ。余程のことがない限り鍵を壊してまで船内に入るようなことはないだろう。その船の中に目当ての物品がありそれを盗難しようとしている計画的なものであれば話しは別だが、たいがいは船内を先の例のような悪さをするために侵入する程度のことで、もし見つかったときに鍵が空いている状態で侵入したのであればお叱りで済むが、鍵を壊してまで侵入したとなると確実に警察沙汰になる。「くそガキ」はこれを嫌う傾向にある。
次の防御策として、船のドア近くに家紋でも書かれた板でも置いておこう。仏壇屋さんで家紋の入ったコップでも買ってきてそれを置いとくのもいいだろう。「くそガキ」が一番嫌うのは警察ではなく暴力団である。無知な「くそガキ」は家紋を代紋と勘違いすることが多分にある。
そして最後の防御策は、船内のまず最初に開けそうな引き出しに1万円くらいをこれ見よがしに置いておこう。「くそガキ」はこの1万円を盗み直ちに退去することは間違いない。得るものがあれば長居は無用なのだ。
いやがらせ(恨み)
お金持ち、ハンサムなど他人に恨まれる要素は身の回りに多くあります。この2例では私は間違いなく他人に恨まれることはないでしょう。
他人に恨まれ、資産の一つである艇に「いやがらせ」をされてはたまらない。しかし現実的に被害に遭っている方もいない訳ではない。「いやがらせ」の部類は直ぐに気が付かない、なるべく痕跡を残さないのが鉄則であり、それだけに被害も小さくはない。
例として、燃料タンクに水を入れたり、エンジンに砂糖を入れたりなどがある。その他にも布団に針を埋め込んだり、飲料タンクに小便を入れたりなど明らかに「オタク」趣向だ。
燃料タンクに水を入れれば当然エンジンは動かなくなる。それは困ったことに直ぐにではなくエンジンを駆動させ、多少の時間を置いてから止まってしまうことだ。航海中にあるとき突然エンジンの調子が悪くなり、いずれエンジンも止まってしまうという危険きわまりない状態になってしまう。
エンジンの潤滑油に砂糖を入れられるのも最悪だ。例えばそれが砂糖でなく砂などであれば、出港前にオイル量をチェックしたときに判る可能性が高いが、もし砂糖が混入されていたとしたら未然に発見することは不可能に近い。エンジンを始動すると潤滑油の温度が次第に高くなり砂糖が溶け、最終的にはエンジンが焼き付くことだろう。
このように恨まれての「いやがらせ」は、即座には気づかないパターンが多いので先の「くそガキ」よりも更にタチが悪い。
これに対する防御策は人からは恨まれないことだ。もし敵が多くてどうしようもない方は、燃料キャップは必ず鍵つきのものにすること、エンジンルームにも鍵をつけること。
窃盗(物品)
フェンダーやロープに関しては防御のしようがないが、その他のものについてはなるべく物品は船内にしまって鍵をかけたり、デッキのストアーにも鍵をつけるなどを怠らないことだ。また、船にカバーをするもの有効である。
双眼鏡などのような高価でかつ小さな物品は船外から容易に見ることができるような所には置いておかないことだ。なるべく引き出しの中やストアーの中にしまっておくように心がけよう。
知的窃盗団(艇)
実は船ほど簡単に盗めて高価なものは他にない。知的窃盗団は盗んだボートを自分で使うなど素人がするようなことはせずに固いルートで売却する。
例えばもし私が知的窃盗団のリーダーならば次のような手順で遂行するだろう。
まず、艇そのものを盗むのは非常に簡単なことである。他の船で曳航してもよいが、もし追われたときのことを考えれば自航するのが一番よいだろう。曳航している状態では逃げるに逃げられないからだ。そして自航する際にはエンジンを始動しなければならないが、精通している者ならば鍵などなくてもエンジンを始動することぐらい朝飯まえの容易いこと。
次に売却だが、これには船籍票の書換えなどが必要となってしまうが、商法と民法の知識が多少あれば簡単にできてしまう。(さすがに具体的な方法まで記述する訳にはいかないので悪しからず)
別の手段として盗んだ艇の船体や構造に多少手を加えて、カスタム艇ということで新規に船舶登記するのも一つの手段だ。造船の知識があればこれも容易いことだ。
何しろ一番手っ取り早いのはまとめて海外に輸出してしまうことだ。輸出通関の際にCOCOM条約の非該当証明が必要となるので航海計器は全て外してしまい、エンジンはどうにもならないので同証明書を偽造してしまう。
さあ、この時点で目出度く窃盗、私文書偽造、公文書偽造、同行使など数え上げたら切りがない程の犯罪を犯したことになり、捕まれば確実に刑務所行きとなる。
この知的窃盗団に対する防御策は難しいが、狙われやすいのは高価な艇、違法係留艇であることぐらいは知っておいたほうがよいだろう。
確実に防御しようとするならば、ロープの一つをチェーンにして鍵をつけること。次にエンジンが絶対かからないようにすること。
エンジンが絶対かからないようにするには、イグニッションキーからバッテリーまでの電気系統に2重3重の秘密のスイッチを付けたり、燃料系統に秘密のバルブをつけたりすれば良いだろう。
海賊(海外)
現代の海賊はハイテク武装をしている。
30ノットを超えるような超高速艇を使い、マシンガン、ナイフなどを身にまとい、航海中の貨物船から金品を奪うのだ。
周囲が暗くなった夜間、ターゲットの貨物船に無灯火で忍びより、鍵のついたロープをデッキに向かって投げ、手すりなどに引っかける。そのロープを伝って、猿の如くスルスルと船内に乗り込む。
海賊がまず最初に向かうのは船長室、ブリッジ(操縦室)、無線室だ。船長室には船員の手当て、接待費、食料費などのいわゆる船用金と呼ばれる金銭が金庫に入っている。この金銭が目当てだ。ブリッジや無線室に行くのは自船が海賊に襲われていることを無線で送信されることを防ぐ為だ。
海賊は大きくわけると2つに分類される。
1つは単に船の金銭を強奪する海賊。もう1つは船ごと強奪する海賊だ。
前者のほうはどちらかといえば良心的??な部類で、下手に抵抗せずに金銭を適当に渡してしまえば離船してしまう。この海賊は主にシンガポール沖やアナンバス海域(フィリピン)で頻繁に現れる。イギリスのテレビ番組でロイドの調査機関の協力で海賊を特集したことがあったが、それによるとフィリピンの某島は島民の全てが海賊行為による収入で成り立っており、何代にも渡って海賊を生業としているという。覆面をつけてインタビューに答えた島の少年は「将来のどんな仕事をしたいか」という質問に対して何のためらいもなく「皆のように海賊さ」と答えているから驚くやら呆れるやら。将来に向かってこの海域は、当局の徹底した調査と取り締まりがない限り、海賊出没海域であることに変わりはないだろう。
さて、この例の海賊を上回る大悪党である「船ごと強奪する海賊」だが、これは素人の出来ることではない。まず、強奪した船をある場所まで航海する航海術、金銭の為に船員を殺害することができる無情さ、強奪した船の積み荷を金銭に替えることができる政治経済力だ。もう素人の域ではない。しかも相当の組織力が必要である。
これは容易いことではないがそれにより得る対価は莫大なものだ。
何十万トンという原油、何万トンという雑貨、何千台という新車。どれをとってみても船の積み荷はスケールがデカイ。
もし私が作家的なストーリーを描くなら、迷わず原油を選択するだろう。雑貨や車はさばくのが大変だし足もつき易い。その点、原油は高価なうえ天然資源という性格上、一度第三者の手に渡れば形跡が残らない。追跡調査も難しい。後進国のいかがわしい業者に市場価格の半額で交渉すれば喜んで飛びつくだろう。そして乗組員については殺害する必要はない。原油を陸揚げした後、どこかの島の近くで救命艇に乗せて離船させればこと足りる。最後に船の処分だがこれは沈めてしまうのも良いが、1トン当たり5ドルくらの安値でスクラップとして叩き売っても1億円にはなることも特筆すべき点だ。
と、知的好奇心として書き綴ってみたものの、実際にはそんなに簡単に事が運ぶ訳がないことは申し上げるまでもない。
自艇を護る為のポイント
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